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どこまでも、夜も寝ない男が追いかけてくる、いつまでも - 2014.07.07 Mon

星がまたたく夜空をバックにタイトル。出演者やスタッフの名前が繰り出されているなか、子供たちの、こころ洗われるような歌声が聞こえる。タイトルが消えると、星空の中におばちゃん(演ずるは世界映画史にその名を残すあの、リリアン・ギッシュ!)が現われ(上半身のみ)、聖書の一部を語りだす。次に五人の子供たちが同じく星空の中に現われて、おばちゃんは彼等に話しているのだろう、子供たちはニコニコ笑って聞いている。「羊の皮をかぶった偽預言者には気をつけろ」というおばちゃんの言葉を最後にこのシーンは終わる。

これが活字では幾度も読んでいた映画「狩人の夜」の冒頭。背筋も凍るサスペンスだと思っていたから、こんなファンタジックな始まりに、はあ? と意表をつかれる。断るまでもなく、今回が初見。

映画は夜から昼へ。農場の庭で子供たちがかくれんぼをしている(空撮)。子供のひとりが隠れようとして納屋の戸を開けると、そこに女の死体が転がっていた!

よしよし、いよいよ本題に入ったかと思う間もなく、子供と死体のエピソードは惜しげもなく捨て去られ、カメラは田舎道を走る一台の車をロングでとらえる。男が運転していて、これがロバート・ミッチェム(以下R・M)。まるで鼻歌を歌うように、時々上目使いで上方を確認しながら、神はどうのこうのと独り言をしていて、最後に、神がお嫌いなのは、鼻につく香水の匂いであり、ひらひらのレースがついた服であり、長い髪でしょうと言って、このシーンも「なんのこっちゃ?!」という感じで終わり。この時、二度三度と車が走る前方の道を撮ったカットが挿入されるのだが、この一見なんでもなさそうなカットが、なぜか怖い。
次に、その男はなんと、ストリップ劇場の客席にいる。女性への悪態をついたあとにこれで、なおかつ、彼は苦虫をつぶしたような顔で舞台上のストリッパーを見ているから笑ってしまう。
が。膝の上でぐっと握り締められている彼の左手の拳の親指をのぞく4本の指それぞれにタトゥーが入っている、一文字づつ<H・A・T・E>と。そして、左手を上着のポケットに入れたかと思うと、中からブスッとナイフの切っ先が飛び出す。
おっ、と驚いた途端、場内に警官がふたり入って来て、男に名を確認し、ちょっと署までと連行していく。先の車は盗難したものだったらしい。彼はコソ泥だったの? 怖い殺人鬼じゃなかったの? なんじゃ、コレ?!
さあ、行くぞと思ったこちらの気持ちは、またもやポキリと折られてしまう。
ここでもまたこれ以上のことは語られることはなく、カメラはそんないかがわしくも危ない場所とひとから一転、のどかな農場の庭で遊ぶふたりの子供をとらえる。
小学校高学年と思われる兄と、まだ4,5歳と思われる妹。そこに、大柄な男が走り込んでくる。ふたりの父だ。そして荒い息を吐きながら兄に包みを差し出し、これを隠せ、あ、あそこがいい。隠し場所を誰にも言うな。神に誓え、このことを誰にも言わない、妹は必ず守る、と。ふたりが神妙な面持ちで頷くと、数人の警官が現れる。その中のリーダー格が拳銃を持ってるゾ、と仲間に注意を促す。父は拳銃を捨てる。警官たちは彼に駆け寄り、横倒しにし、子供たちの見ている前で、後ろ手に手錠をかける。父は銀行強盗をして(そのときに殺人も)、子供に渡した包みは大金だった。

冒頭のおばちゃんと子供たち。かくれんぼをしていて死体を発見した子供たち。ストリップ劇場で捕まった男。農場の兄妹と、子供の前で手錠をかけられた父。これら・彼等の間に、いったいどんな関連・関係があるのかなにも説明されることなく、それぞれはそれぞれとしてあっさり放り出されている。
この映画は100分に満たない長さだが、始まりから終わりまで、ツバを飲み込むのもためらうほどの緊張感と恐怖を強いられる。もちろんストーリーそのものも怖いのだが、なにより、それぞれのエピソードが惜しげもなく切って捨てられ放り出される(そう、まるで切り刻んだ死体を川に捨てるように)、そのことが怖さをよりいっそうなものにしているのだ。もちろん、これら遠くにあるモノたちが、物語の進行とともに、重なり、結ばれていって、それが更に恐怖を煽るのだが。
更になお。この恐怖を寸断するように、時々、天使の寝言のようなファンタジックなシーンが挿入される。

凄スギル!

ストーリーの詳細は記さない。
見終わってもう一度見直すと、ああ、あれはそういうことだったのかと合点のいくところが多々あるのだが、しかし、なんとなく見逃していた聞き逃していたところが今度は気になり、またもう一度見てしまう。
これは止められない止められない、いつもでも終わらない、夢のような映画なのだ。

監督はイギリスの名優チャールズ・ロートン。これが監督としてのデヴュー作だが、客は不入り、批評家からは無視、ということで、結果としてこれが生涯最後の監督作品となった。
まったくねえ。いまでは映画史に残る傑作と評価されている作品が、公開時にはこんな不当な扱いを受けてたわけです。大半の客なんてものは、巣の中で口を開けて親鳥が運んできてくれるエサを待ってる雛鳥みたいなものだから、しょうがないんだけど、問題は批評家を名乗る連中。この映画に光を当てたのは、ゴダール、トリュフォー等であって、いわゆる<映画批評家>ではないんですから。

その正体を明らかにしたR・Mは、子供たちを捕まえて金を奪いとろうとする。兄妹は、(死刑になった)父の形見の舟で川を下って逃げる。どこまで来たのか、幾日経ったのか。今夜は舟ではなく陸で寝ようと、ふたりは農家の納屋に潜り込む。聞き覚えのある歌声が聞こえたような気がして、兄は目覚める。外を見ると、月明かりに照らされて、向こう岸に馬に乗った男のシルエットが。もちろん、R・Mが追いかけてきたのだ。
怖いヨ~。

ここで呟く兄の台詞がいい。「あいつ、夜も寝ないのか ……」

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