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誰もが野心的である必要はない、でも …… - 2014.03.10 Mon

佐村河内某が人品尊からざる男であることは誰もが思うところであろうが、記者会見で彼に、あなたは有名になりたかっただけだろう、という意味の暴言を発したフリーライターらしい男もまた、河内守氏と同系統の人間であろうことこともまた、誰しもが思うところだろう。公の場で、特に害を受けたわけてもない者が、他人に対してあんなに居丈高になれるのは、もちろん、守氏=悪人、わたし=正義のひとという図式に誰も異論はないはずだと思い込んでいるからだ。脇が甘いな。ひととしてはいかがなものかだが、物書きとしてもB級以下のひとだろう。

誰にだって少なからず名誉や名声に対する憧れがあり、それは上昇志向と呼ばれ、そのことを露にすれば野心家とも呼ばれる。大方の人間は野心家だが、しかし同時に、小心者でもあるから自らの野心実現のための行動は叶わず、成功者に憧れたり、妬んだりするだけだ。

ケン・ローチの「カルラの歌」を見る。1996年の作品。彼はわたしよりひと回りほど年上だから、60歳くらいに撮ったもの。でも、この瑞々しさはどうだ。

グラスゴーの市バスの運転手が主人公。上司と衝突を繰り返す面倒な男だが、気持ちが優しく、余計なことに首を突っ込む。まるでフーテンの寅みたいだ。彼には古い友人で結婚も間近らしい女性がいるのだが、彼のバスに無賃乗車した、謎めいた異国の女性を好きになってしまう。詳細には触れないのでよく分からないと思うけれど、それで彼は彼女の故郷ニカラグアに行くことになる。確か1980年代と時代設定をしていた。いまもニカラグアの政情は不安定だと思うけれど、この時代はCIAに後押しされた政府軍と革命軍との戦闘が繰り返されていた。いろいろありまして。イギリスの寅さんは、この国のこの状態が自分にはよく分からない、自分はなにをしていいか分からないといってグラスゴーに帰る。

彼が革命戦士にならないのがいい。彼にだってひとなみの野心があり、恋の成就のためなら婚約者を捨てるし、戦闘中の彼女の国にだって行く。でも、それ以上のことは出来ない。フツーの人間のここが限界なのだ。そのことを肯定するケン・ローチの目の低さがいい。

PCは便利な道具だ。こんなこともあんなこともやってくれるので、自分が希望したことはすべて実現しそうな妄想にかられる。S・M氏もきっとそんな妄想にかられたのだろう。ずっと昔は、身の回りに理不尽なことがあっても、多くのひとはこんなものだとあきらめていたし、また、わたしたちの知りうることも限られていて、というか、知りうるのは自分に似た人々に限られていたから、不幸なのは自分だけじゃないと自らを納得させやすかったのだとも言える。


「ゲンと不動明王」。監督は稲垣浩。主人公役の小柳徹が懐かしくつい見てしまった。50年代の作品(のはず)。
ゲンの家は貧乏寺で、母は病気で亡くなっており、家族は坊主の父と小学校高学年と思しき彼と、多分まだ学校には行っていない妹の3人。物語は、寺の鐘が台風かなにかで鐘吊り堂から落ちてしまい、元通りにしたいのだが、そうするためには結構お金がかかる、どうしたものかと、村の檀家たちが寺に集まって協議しているところから始まる。

野心的なところなどほとんどないが、なんだろう、ちゃんと映画になっている。ゲンが憧れている不動明王(演ずるは三船敏郎!)が彼の夢のなかに出てきて、泣くな、元気を出せと励ますのだが、その場面は一応特撮になっていて、そこは円谷英二が担当。でも、野心的というほどのこともない。

父に後妻が来ることになる。が、ゲンにとっては新しい母親になるはずの女性は、わけあって離婚、その時に婚家に残してきた男の子が忘れられないから、男の子供はいらないという。それで、ゲンは隣町の雑貨屋の家に預けられることになる。
それからあれこれありまして。ゲンは手に負えないということで、実家に返されることに。そこでまたあれこれありまして。新しい母親はある朝家を出て、実家に帰ってしまう。新しい母親になついていた妹がお母さんに会いたい、会いたいといってきかないので、ゲンは妹と一緒に母が住む町まで会いにいくことにする。どれくらい離れているのか定かではないのだが、バスで小一時間くらいはかかりそうなところへ、二人は歩いて行く。なぜ? お金がないから。

山間の道を歩いて行くところ、キアロスタミの「友だちの家はどこ?」みたい。ただ歩いているだけなのだが、「大丈夫か、きみたち」と声をかけたくなる。なにかとんでもないことが起きたらどうしようと、胸がしめつけられる。

結局、母は寺に帰ってくることになるのだが、ゲンは隣町のお寺に預けられることになる。ゲンはまるで犬や猫の仔のように、あっちに行かされこっちに戻されし、当然のように泣きじゃくったりもするのだが、先の不動明王が登場し、世の中にはお前なんかよりずっと可哀そうな子供はいっぱいいるんだ、とかいって、ゲンを雲の上に乗せ、そのかわいそうな子供たちを見せるのだ。それとこれとは話が違うぜと思うけれど、ゲンは納得して隣町のお寺に行くことにする。
ラストシーン。坊主に連れられ隣町に歩いて出かけるゲンと、戻ってきた母を乗せたバスがすれ違う。ともに相手には気づかず。妹は兄の見送りもそこそこに家に向かって走り出す。なぜか? 寺の鐘をついて、わたしはいつもここにいるよと知らせるために。この妹がチビの癖になんか色っぽい。ま、それはいいんですが。鐘に始まって鐘で終わる、と。

千葉の柏の通り魔。被害にあったひとはもちろん不幸だが、容疑者の彼もなんだか可哀そうだな。
自分は他人とうまくコミュニケーションがとれないという自覚をもち、それでネットにはまって。チャットだのラインだのというのがもうひとつ理解できてないのだが、とにかくそこで、誇大妄想的なことを吹きまくっていた、と。それで面倒なヤツと思われて、みんなに無視され、孤立感がいっそうつのって犯行に ……

昔はね、それこそゲンみたいに、多少の理不尽は、みんなこんなもんでしょと受け入れてたんですよ。不満があっても表現手段がなかったから黙ってた。そう、大方の不幸なんてものは黙ってりゃ、そのうち後になって、ああ、あんなこともあったなあ、みたいなことで忘れてしまえるんですよ。
でも、ネットなんて便利なツールが出来てしまったもんだから、不満も孤立感も、書けば書くほどつのってしまう、と。

「ゲンと ……」には「カルラの歌」にあったような、野心も冒険もないけれど、監督の稲垣浩には映画を「映画」に出来る確かな腕=技があったのだが、先日見た芝居には、残念ながらそれがなく。野心も冒険も腕も技もない、そんなものお金をとっていいのかな、いや、多くの客はそこそこ楽しんでたみたいだから、わたしなんぞがガタガタいう筋合いでもないのかな、いや、でもなあ、作ってる人々、満更知らない連中でもないから、言うべきことは言っておいた方が …

MONOの新作。とにかく台本がいけない。素人さん並み。冒頭。闇の中から男と女の声が聞こえる。あとで、そこは屋根裏だということが分かり、お話は、この屋根裏から下の部屋を覗いている者たちのあれやこれやなのだが。
先の男女、屋根裏がなにか怪しいということで調査に来たのだが、途中で持ってきた懐中電灯をなくしてしまって、だから、真っ暗という設定。バカな。来た事もない、危なそうなところに懐中電灯を持たずに来ますか? 緊急事態でもなんでもないのにですよ。引返すでしょ、フツー。で、別の懐中電灯を用意するでしょ、フツー。

重箱の隅を突っつくようなことを言ってると思われるかもしれないが、こういう小さなことへの細心の注意が嘘を本当らしく見せるのです。作者はそれくらい分かり過ぎるくらい分かっているはずですが、でも、一事が万事で、この手のそんなバカなとあきれ返るような出来事の羅列なんですよ、この芝居。

いいですよ、バカみたいな話でも。でもね、例えば冒頭のシーン。客席からはなにも見えないけど、声だけ聞こえる、そういうところから始めたいと思った。じゃ、どうするか。もっと考えないといけないわけでしょ、出来れば奇想天外なことを。いや、そこまでいかなくても、わたしみたいに引返せという声を封じる一手を打たないと。女の子の着ているものが釘かなんかに引っかかって動けない、とか。脱げよとか男が言って、女はわたしの裸を見ようと思ってるんでしょ、みたいなことを言って、とか。
俳優たちもねえ。別のところで昨日も見た一昨日も見た、3年前にも10年前にも ……というような、やってる自分たちにとってもさほどの驚きもないような演技の連発。一昨日だったか、ドラボの芝居の感想を書いたいくつかをネットで読んでたら、中に、もっとうまい俳優でやったらもっと面白いのに ……というのが幾つかあったが、そのひとたちの上手い下手の基準がどんなものか、もちろんわたしの知るところではないが、もし仮にMONOの芝居の出演者たちを上手い部類に入れているとしたら、わたしは俳優なんか下手で結構、と思うのだ。

下手でいいけど、無謀な冒険家でありたいな、と。










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